海外赴任者に対する賃金の考え方

 2018.10.23  株式会社パソナテキーラ

こちらのブログでは、海外人事業務を行うに当たって、駐在員管理などの特殊性を把握し、海外人事業務を円滑に実施するためのエッセンスの一部をコラムとしてまとめています。
今回は「海外人事における賃金の考え方について」ご説明します。

グロスアップ計算とは?

日本で勤務している時の賃金の決定においては、基本給に諸手当を加算した総支給額を基本に考えま す。決定した総支給額から、社会保険料、所得税などを控除した差引支給額、すなわち手取り額を支給しま す。

他方、海外赴任者に対する賃金はこれとまったく逆の発想で、先に手取り額を決定し、その手取り額から社 会保険料、所得税を逆算し積み上げていき、総支給額を算出します。これを「グロスアップ計算」といいます。

社会保険料が二重になる?

日本と社会保障協定が発効されている国は、18 カ国(2018 年 9 月現在)あり、それらの国に赴任さ せる場合には、日本の社会保障制度に加入するのみで良いため、社会保険料は日本の分だけ控除します。

しかし、社会保障協定が締結、発効されていない国に赴任させる場合には、海外赴任者は日本の社会保 障制度に加入したまま海外の社会保障制度にもあわせて加入することが原則となります。つまり、日本と海外 の両方の社会保険料を負担することになるのです。そのため、総支給額からこれらの社会保険料を控除してし まうと、当然ながら、赴任前よりも手取り額が減ってしまいます。

そこで、海外赴任者に対する賃金の設計においては、まず手取り額を決め、その手取り額をキープするため に必要となる現地での社会保険料や税金を付加して積み上げていきます。つまり、逆算した結果として総支 給額が決まることになるのです。

No Loss, No Gain の原則

また、海外赴任者に対する賃金には、「No Loss, No Gain(ノーロス・ノーゲイン)の原則」という考え方 を取り入れる企業が多くみられます。つまり、海外赴任したことで、日本で勤務していた時と比較し、「損も得も しない」という考え方です。

海外赴任したことで非居住者となり、日本における所得税はかかりませんが、海外の税制は課税範囲も税 率も異なるので、日本における所得税と同額を控除して、現地の税金は会社が全額負担する措置をとるのです。つまり、「みなし所得税」を控除して日本での賃金と手取り額に差が生じることのないよう調整するわけです。

賃金の決定方式

海外赴任者への賃金の決め方は、主に以下の「購買力補償方式」「併用方式」「別建方式」の 3 つに大 別されますので、簡単にご紹介します。

購買力補償方式:日本での賃金水準を基準として、現地の生計費指数や為替レートを考慮のうえ、賃金 額を決定する方式。生計費指数は、コンサルティング会社から発表される都市別のものを使用するのが一般 的だが、公的指標である国連職員の赴任地域別生計費指数を使用することもある。為替レートの変動によっ ても毎年見直す必要がある。

併用方式:日本国内でこれまで支給してきた基本給をそのまま海外で支払う基本給として現地賃金に換算 し、これに海外勤務であるために余分に支出を要する分を手当として加算する方式。海外基本給は大幅に円 高または円安になった際に、設定金額を見直す必要がある。

別建て方式:日本国内で支給してきた賃金とは全く無関係に、赴任先の国、地域および赴任中の職務や 役割にもとづいて賃金額を決定する方式。別建て方式による場合は、通常、毎年の物価変動に見合う調整 を行っていくことになる。古くから海外勤務者の基本給決定方式として使われてきたが、現在ではこの方式によ る場合は少ない。

海外赴任者の賃金については、一般的に、国内勤務時の給与の手取り額を保障したうえで、手当が設定さ れています。つまり、実質的な賃金水準を安定させているということになります。

なお、実際に支給した給与データはきちんとまとめて蓄積していなければ、管理上も運用上も不都合が生じ、 給与の見直しも不便になります。海外赴任者の給与計算は個別に対応するケースもありますが、給与データ 管理機能(データベース)をしっかり準備しておきましょう。

規程の整備

為替の変動や物価上昇などといった赴任地の経済状況の問題もあるため、給与についての明確なルールを定 めておかなければ、海外赴任者が不安に陥ったり、不満を募らせたりすることがあります。また、海外赴任につい ては、往復の引越し費用や本人・家族の帰国費用をどうするのか、といった問題が生じます。これらの対策とし ては、海外勤務規程等の整備が重要になります。

そして、日本で使用する就業規則等も赴任者が閲覧できる状態にしておくべきものですので、これらの規程類 は海外からも閲覧可能な環境下においておく必要があるでしょう。

本コラムは海外人事に強い HR プラス社会保険労務士法人と、海外駐在員管理のクラウドサービス “AGAVE”を提供するパソナテキーラの共同作成したコラムです。

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